zatsunamemo’s blog

飯食ったり本読んだりしてる。

【読んだ】松本俊彦「薬物依存症」

薬物依存症 (ちくま新書)

薬物依存症 (ちくま新書)

ピエール瀧逮捕を受けて読んだ。

めちゃくちゃ面白かったのだがそのキーワードは「孤立」だった。酒は大人の、タバコを不良の仲間入りの為にあったと考えるととてもわかりやすい。違法薬物であっても多くは誰かと「つながり」を持つため使うのだという。しかし脳と心を「ハイジャック」され依存症になると、むしろ「つながり」を破壊してしまう。

著者は薬物依存症を「孤立の病」と考える。治療しようにも「孤立」させないようにしないといけないが患者は何度でも裏切る。日本は厳罰ばかりで治療は欧米と比べて遅れているようだけど(アルコール依存症の病院にも治療を断られることがあるという)、希望が無いわけではないみたい。

以下メモ。

厳罰でなぜ治らないのか

  • 著者が刑務所での受刑者への質問。著者「(薬のせいで)兄貴にヤキを入れられてどんな気分だった?」受刑者「余計にクスリをやりたくなった」
  • 一番再発しやすいのが刑務所(や病院)を出てすぐだという。
  • 禁酒法でアルコール問題は減少せず、闇酒でギャング(アルカポネ)が巨利を得た。

誰が依存症になって、誰がならないのか

  • 虐待やネグレクト、ADHDの子供はドーパミン活性が低く薬物のような強烈でダイレクトな刺激でないと興奮せず、薬物依存症になりやすい。
  • 檻の中のネズミと雌雄ペアのネズミを比較した実験ではペアのネズミに比べ檻の中のネズミのは依存症になりやすい。

危険ドラッグと法規制

  • 日本では規制対象となる薬物はすべて化学構造式で定義されているので、その式を少し変えるだけで「脱法」することができた。
  • 日本人の高い遵法精神から脱法の市場価値は高かった。違法でないなら何ら問題ないわけだ。
  • いたちごっこが進むにつれ、どんどん急性中毒の症状が悪くなっていった。
  • 最終的には2014年の改正薬事法(ヤバそうなものを売りたければ自分で安全性を証明しなければならない)により販売店は一斉に店をたたんだ。

日本と海外

  • 海外に比べると日本は薬物経験者は極めて少ない(米国48% 日本2.4%)。
  • 海外で乱用者の多いヘロインモルヒネは広がっていない。
  • 海外(アメリカ等)ではドラッグコートという地域のなかで治療を受けることで減刑される制度が効果をあげている。

回復

  • 薬物依存症の回復で何より重要なのが「やりたい」ときに支援者に「やりたい」と言えること。「やってしまった」「やめられない」と言えること。
  • なんでもオープンに話をできるのは売人だけだった、勧められるとやめられなかった。
  • 著者はスマープという回復プログラムを開発し広がっている(本の中で詳しく説明されている)。